伝統的石工道具による石材加工の記録
事業概要
かつて滋賀県内では、日野町の蔵王村や近江八幡市の岩倉村をはじめ各地で良質な石材が産出し、山から石材を切り出し細かく加工する多くの石工が活躍し、暮らしの中に深く根付いた石文化を形成してきました。
滋賀県南西部の比良山麓にも、こうした石工集団が存在していました。
その比良山麓で石工の親方であった比良岡家には、千点を超える伝統的な石工道具が残されており、滋賀県立琵琶湖博物館に寄贈され、貴重な資料として収蔵されています。
これらの道具は、滋賀県の有形民俗文化財に指定されました。
あわせて、南小松地区で明治から昭和初期にかけて活躍した、名工・西村嘉兵衛が使用していた石工道具や関連資料も収蔵されています。
私たちは、これらの石工道具を実際に見学させていただく機会を得て、会員数人で訪れました博物館で一点一点丁寧にクリーニングされ、整理された数多くの石工道具を前に目を見張ると同時に、それぞれがどのような工程で、どのように使われていたのかを言葉だけで説明することの難しさを実感しました。
そこで、伝統的な石工の仕事をよりわかりやすく伝えるため、実際に石工道具を用いて加工した石材のサンプルを製作し、あわせて加工の様子を記録した動画を制作することを企画しました。
滋賀県石材組合連合会が設立50周年を迎える節目の時期に、先人たちが残した石工道具と出会えた「ご縁」に感謝し、この取り組みを50周年記念事業として実施することとしました。
今回使用する石工道具は現在主流となっている超硬合金製のものではなく、すべて鉄製の伝統的な道具です。
そのため、現在まで保管している会員があるか調査するところから事業を開始しました。
全国石材技能士会の会員の皆さんにも道具調達にご協力いただき、幸いにも、加工に必要な道具一式を揃えることができました。
石材サンプルの製作は、会員全員で取り組む事業として行いました。
また、動画制作についても、石工による加工、撮影、動画編集に至るまですべて会員自らの手で行いました。
こうして完成した石材サンプルと映像資料について、琵琶湖博物館での活用を提案させていただいたところ、快くご賛同いただき、博物館への寄贈が実現しました。
これらの資料は、来館者に対して伝統的石工技術を具体的に伝えるための展示・学習資料として活用されることが期待されます。
また、伝統的石工道具による石材加工の様子を記録した動画は、私たち石材業界にとっても貴重な技術資料であると考え、広く共有することを目的にインターネット上に公開することとしました。
本事業を通じて、地域に根付いた石文化と石工の技を、次世代へと伝えていきたいと考えています。